地獄の2カ月 その1

仕事シーズン2・上

社長VS品質管理課 ファイナル(前回の記事)

 さて、配送と半自動成形という仕事を担っていたTが会社を退職したのを(正しくは追い出された)覚えているだろうか?配送の方はY社の水木さんがやることで話はついていたが、問題はもう1つの仕事、半自動成形の方だった。

地雷見えてるが

 半自動成形は機械に対して人がずっと付きっきりの仕事である。金具を入れたり、ゲートを切ったり(プラモデルのパーツを切り離す場面を想像してほしい)、検査してコンテナに詰めたり。この業界で仕事をして行こうと思ったらこれが出来なければお話にならないくらいの基本中の基本の仕事で、慣れたら簡単すぎて暇になりつまんなくなるレベルのお仕事である。
 弊社の半自動成形機は2台あるが1台目はほとんど稼働しておらず、2台目ばかりを使用している状態だった。月の稼働率は約50%。毎日半日だけ稼働させて丁度良い具合だったので、Tが退職した後の半自動成形をやる人間を探すのが急務であった。てか、後任も考えないで追い出すとか頭おかしい。ちなみに女性陣も手一杯(正しくはワイが)で半自動成形に人を回せる余裕はない。
 社長は無料求人誌で募集をかけているようであった。条件としては週3日くらいのアルバイトで出来れば若い男性を希望(といっても求人内容には書けないのだが)。この仕事は前社長時代に高校生のアルバイトにやってもらっていた時期もあるくらい本当に簡単なものなのだ。社長は今回の募集にあたり「若い人を雇ってもし仕事が出来そうならフルタイムで雇うことも考える」と言っており、どうも会社の若返りも狙っているようだ。確かに1番最高齢だったTが退職したところでパートは50過ぎた人間ばかりで工場長も40代、ワイは30代(1番若い)と、パートタイマーのせいで平均年齢が高すぎたのもあるが、社長が弊社を引き継いでからの初めての採用で失敗しており、指示する立場である工場長のXよりも年上だとそのプライドが邪魔をして上手く行かない事も考えたようである。
 そんなある日、社長が弊社に来て「昨日(会社休み)応募があった」という話をし始めた。話の内容はこうだ。まず応募の電話が入る。流れで即面接(と言っても応募者は弊社から車で1時間はかかる場所に住んでいる)。いざその応募者に会ってみると、「週3日ではなく5日働かせてほしい」とごね始めたかと思ったら、弊社の仕事の内容も把握していない先から「ここで何としても雇ってほしい」「ここしかない」「何でもします」と立て続けに言ってきたのだという。しかも応募者の年齢60代・・・。
 これは聞いているだけで「ワケアリ」なのが分かる。しかもこの業界はどこもかしこも人手不足であり、彼が住んでいる町はむしろ弊社の所在地よりも同産業が盛んな地域。それなのに何故か場末のスナックのような弊社が最後の頼みの綱とか、怪しすぎて面接で落とされまくって仕方なく弊社まで流れ着いたというのが真実だろうよ。
 こんな隠れてすらいない地雷のような人物、もちろんその話断ったよね????

シャチョ「雇うことにしたから」
 
・・・今までの経験則から言えば変な人間が入ってきても社長は後は知らん顔で現場に丸投げするだけなので面接がある意味1番重要になってくるのに、その面接がザルとかふざけんなよこのクソ野郎。
 社長曰く「他に応募があるとも思えないし、今までも同じような仕事やってたらしいし、押し出し成形もやってたらしいからダイジョウブダトオモウヨ(何故かワイから目をそらす)」だとよ。いやいや、まずね、諦めるの早すぎなのよ。まだ募集かけて3日しか経っていないんだからもう少し待てや。そして出て来た「押し出し成形」という言葉。この押し出し成形、成形の中でも高度な技術を必要とする方法で、この「押し出し成形」を扱っている会社はそう多くはなく、ほぼ100%そのやり方を企業秘密にしているくらいである。ぶっちゃけこの応募者に「押し出し成形」の技術があるのであればまず転職には困らない。よって弊社みたいな寂れた会社に応募して来るなんてまず100%ありえない。つまりこの話は「ウソ」と思われる。
 面接の時点でのごり押しと誰が聞いてもウソと思われるような堂々とした経歴詐称。しかも週5日勤務を希望でしかも高齢。その時点でミスマッチなのだから本来は面接で落とさなければならない人物なのだが、「他に応募がない」という安易な理由だけでこの地雷のような人物を雇うとか頭悪すぎだろ、人間やめちまえ。

 こうして、どう聞いてもヤバい奴にしか思えない応募者の入社が決まってしまった。先が見えてて最早憂鬱以外の何物でもないんだが、社長にはこれから起こる出来事が全く予想出来ていない模様。そしてここから地獄が始まるのである。





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