目先のものに飛びつくな その2

仕事シーズン2・上

目先のものに飛びつくな その1(前回の記事)

 「他にいないから」という安易な理由で和田さんを雇う事になった弊社。週3日(1週間で合計15時間)しか来ないのが、不可抗力とはいえどうしても引っかかるワイであったが、とうとう彼女の入社日を迎えてしまった。

経験者とは・・・?

 和田さんの入社の挨拶に合わせて、前から決まっていたワイの主任昇格の発表も同時にすることになった。まぁ、新しい人が入ってからという約束なのでこのタイミングなのは良いが、果たして主任になることが本当に良いのかどうかは気になるところではある。朝、和田さんが出勤してきた所で直前に弊社に来た社長に事務所に集められる従業員一同。

シャチョ「え~と、今日は月曜日ですが・・・本日から働いてもらう事になった和田さんです」
和田「よろしくお願いします・・・(声無茶苦茶小さい)」
シャチョ「和田さんには主に半自動の機械の方と、機械がない時は皆さんと一緒に検査の仕事をやってもらいます。・・・あと・・・本日から腹痛のシメジさんには主任をやってもらう事になりました」


 社長がそう言った瞬間、パートタイマーBの顔が思いっくそゆがんだのをワイは見逃さなかった。まるで「なんでこいつが主任なワケ?」とでも言いたそうな顔で草。心の中でなら何とでも思ってもらって構わないが、いい年したババアが気に食わない事をモロに顔に出すさまはまさしくBの性格そのもの。お下品すぎやろちょっとは慎めや。そんなBのクソふてぶてしい顔を横目に、ワイは皆に頭だけ下げておいた。
 挨拶が終わり検査室へ向かう女性陣。今日は機械がないため、和田さんには検査をやってもらう予定である。仕事の采配はワイが行っているため、ワイは彼女にF社の仕事をやってもらおうと考えていた。もちろん簡単な部類の仕事である。彼女に席に座ってもらい、同じような仕事はやったことがあるかと聞くと「ある」とのお答え。そして仕事の説明をする。気を付けなければいけない箇所を重点的に教え、ワイは和田さんの隣の席なので、気になることは何でも聞いてくれと伝えた。
 しばらくすると和田さんから質問が来た。「不良の限度が分からない」という。実は検査というものは「感覚」がかなり大事になって来る仕事で、簡単な検査でも初めてやる人は中々習得が難しい部分もあるのだが、あれ?彼女って「経験者」じゃなかったか?と疑問を抱きつつも、まぁ会社が違えばやり方も違うしと思い教えるワイ。判断が付かないものは全部出してもらって、最後に一緒に判断するという手法を取った。
 彼女が「分からない」と判断したものを手に取って「どうしてこれはダメでこれは良いのか」を比べながら説明するワイ。その中に〇〇という種類の不良があり、ワイはこの不良は〇〇だからダメですね、と言うと彼女は「え?これって〇〇(不良の種類)じゃなくて△△(不良の種類)じゃないんですか?」と言い始めた。いやいやいやいや、この不良はどう見ても〇〇で、△△とは程遠い。もしや彼女は不良の種類の名前を過去に間違って覚えて来てしまっているのか、それとも〇〇と△△の事が同じような見た目に見えるのか、それとも別の理由か・・・。頭の中が?になりながら、彼女を指導してる間にお昼の休憩時間になってしまった。お昼を食べながら、大人しそうな和田さんがいきなり喋り始めた。

ワダ「応募の電話した時、社長に週3日でも面接してくれるか聞いたら「良い」って言ってくれて、しかも採用してくれてラッキーと思った~」

 ・・・いや、アンタはラッキーかもしれんがこっちはアンラッキーなんだよ、ってか社長の野郎こちらの意見も聞かずに勝手に週3日オッケーしてんじゃねぇぞ。そんな和田さんに「良かったね~」と口では言いながら、一抹の言い知れぬ不安を覚えるワイ。経験則上なんとなく嫌な予感するんだよなぁ・・・。
 午後からも午前の仕事の続きである。和田さんは慣れて来たのか、午前中より聞く回数も不良の数も減って来ていた。ただ、仕事の速度だけはめちゃんこ遅かったが、まぁ初めての仕事だし緊張もしてるだろうし、慌ててミスをするよりはじっくり時間をかけてミスをしない方が良いだろう。速さに関しては時間の経過に合わせておいおい指導していけば良いわけで・・・。
 そんなこんなで和田さんの帰る時間となった。今日は月曜日なため、明日は彼女はお休みの日である。・・・ここでふと気が付いた。こんなペースで仕事覚えること出来るんかいな、と。彼女の1週間のサイクルを考えると「月曜出勤→火曜休→水・木出勤→3連休→月曜出勤・・・(以下ループ)」となるわけで、和田さんの年齢で1週間に1回必ず3連休が入るとなると仕事覚えられるのかな、と。休んでる間に覚えた事忘れていくんじゃないか、と。だが、社長が言うには「やりにくいけど経験者だからその辺慣れててカバーできると思うからダイジョウブ」らしいんで、きっと大丈夫なんだろうよ(白目)。
 納得いかないながらも、彼女がやった仕事を確認のために再検査するワイ。すると、ワイが「これ気を付けて」と重点的に教えた不良が良品の中から出てきた。おい、このパターンどっかで見たことあるぞそうならないためにワイはなるべく彼女の横にいて、せかさないように彼女のペースで仕事をしてもらっていたのだ。本来ならばこの仕事は1時間もあれば出来るのを、彼女は丸1日(5時間)かけた。それだけ時間をかけても丁寧にやってくれたのであれば文句はない。・・・が!実際は重大な不良を見逃していたわけで、初めてだから仕方ないと思いつつも簡単な部類の仕事であり、しかも彼女は経験者をウリに週3日での採用をしてもらったわけで、こいつはやはり嫌な予感しかしないわ・・・。

 重大な見逃しをした和田さんだが翌日は彼女はお休みの日のため、この事実を本人に伝える事も出来ない。もどかしいワイ。さてどうなる・・・次回へつづく。

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