孫請けレベルの零細の会社には「品質管理課」や「品質保証課」という課は存在しない。じゃあ、適当にやってんのかと言われたらそうでもない。正しくは、「現場がやれる範囲でなんとかギリギリやっている(が、ほとんどまともに出来ていない)」である。
基本はその日暮らしの零細
孫請けの零細が何かやらかした時に、メーカーと孫請けの間を取り持って話し合いを進めるのが、メーカーの下請けの会社の「品質管理課」である。孫請けがクレームを発生させた場合、その孫請けに直接仕事を発注した会社の管理責任が問われるためである。
こんな大変そうな取引先の品質管理課(略して品管)ではあるが、今から15年くらい前まではほとんどしゃしゃり出てこない課だった。例えば、不良品を納品してしまった場合でも、その該当の製品のみが返品され代替品を納めれば済むことがほとんどだった。
その空気がじわじわと変わり始めたのは、リーマンショック後だった。売り上げを確保するべく、メーカー側は品質というものにテコ入れし始めた。ただ、その「じわじわ」が「ガッツリ」に変わり始めたのはここ5、6年くらい前からである。
今まで良品として通っていたものが通らなくなったり、1個でも不良が見つかれば全数返品になったり、製品自体が細かすぎて量りでは正確に数をカウントできない物をきっちり入り数通りに入れろという指示が出たり。実際にこういった指示を出しているのはメーカーなのだが孫請けとメーカーは直接交渉は出来ないので、下請けの会社が間に入って我々に指示を出す運びとなっているのだ。これらの厳しくなっていった事項については、別の回で書きたいと思う。
さて、メーカーや取引先の要求が厳しくなっていく一方で、昔の感覚でいるのが零細の孫請けの社長である。今までこれでやってきたのにそんな難しい要求は吞めない、ってことらしいのだが、これには同情すべき点と反省を促したい点が混在している。
同情すべき点としては、要求が増えても単価は上がらない(事実上の値下げ)という事である。メーカー側も激しい価格競争の真っただ中にいるため、自分たちの利益を削ってまで下請けにやる金はないという事である。これではやる気が起きない。
さて、続いては孫請けの社長どもが反省すべき点である。まず、昔はこれでやっていたと言うけれど、今現在においてどうして15年前のビジネスモデルが通用すると思うのか?15~20年前は、ぶっちゃけ経営者があんたでなくとも稼げた時代である。メーカーも厳しくなかった。それが時代が変わり、そしてメーカー側や直接の取引先の社長が世代交代をしている。取引先の社長が変わるという事は、「それまで情でつながっていた部分がなくなる」のである。
取引先の先代の社長と何らかの繋がりがあって、ウチの会社の仕事をやってくれないか?と頼まれて起業した零細の社長は多い。故に何か問題が起こっても「あの会社には頑張ってもらってるから」と見逃されていた部分があったのも事実だ。それが社長交代で完全に断ち切られるという事である。
これに気付けない零細の社長は多い。本来ならば15年前まだ稼げていた時に、この先の想定し得る「時代の変化における対策」を練っておくべきだったのである。そして、100%自分の会社の運命を取引先に依存しているにも関わらず指示を聞きたくないというのは、じゃあお前なんのために孫請けやってんの?って話になっちゃうだろが。
こうして、零細の社長は2つの感情の間で常に揺れ動くこととなる。1つは「こんな事やってられるか」、もう1つは「でもやらなきゃいけない」。これに対する社長の答えは大体決まっている。
そうだ、現場に丸投げしよう!
どういう事かというと、例えば取引先からクレームが来た時の実際のお話をしよう。そのクレームは、パートタイマーのBさんがやらかしたものだった。Bさんは私と15歳くらい離れており、しかも勝気な性格で、私が年下なのもあってか指導してもなかなか思い通りに動いてくれず、クレームの数(未遂も合わせて)はワーストだった。
彼女は伝手で入ってきた人物である。この人物を雇おうと決めたのは腐れ社長自身である。私はかなり前から彼女に頭を悩ませており、何回も社長に現状を伝えていた。口で言ってダメならとパソコン(自宅で作成)でマニュアルを作ったりもしていたが効果もなく。そして、私が言っても効果がないので、社長からやんわりでいいから注意してもらえないかと何回もお願いしていたが、丸無視されていた。
そんな中で起こったクレームだった。クレームには2種類あって、1つめは「普段は検査をかけない箇所に何らかの理由で発生した不良」で、これは「発見するのが難しい」ために、どちらかと言うと製造部門に聞き取りが入るタイプである。検査に関しては「次回からはこの箇所も検査して下さい」で終わるやつである。
2つめは「どうしてこれ見逃した?」というやつである。「不良箇所が検査対象の部分にあり、なおかつかなりデカい不良」である。これは、完全に検査をやった人間の見落としであり、言い訳が効かないやつである。
Bさんがやらかしたのはもちろん後の方である。日頃からだるそうに検査したり、時間をかけて検査した割には見逃しが多かった。いつかは大問題が起きるのを予測していた私は、それを阻止すべく社長に随時彼女の問題点を報告していたのである。別に趣味で報告していたわけではないのだ。
このクレームの聞き取りに取引先の品管がやってくる事が決まった。当然ながら、私はやらかした本人に立ち会ってもらうつもりでいた。ところが社長はこう言ったのである。「腹痛のシメジ君、取引先の品管の相手よろしく」。
( ゚Д゚)・・・はぁ?
ぶっちゃけ、ここでB本人(もはや呼び捨て)に立ち会いさせないとまた同じことを繰り返すのは目に見えていたため、私は社長に食い下がった。誰かが代わりに尻ぬぐいしたら改善されませんよ、ここは抑止力の意味も含めてBに出てもらわないとダメだ、と。ところが社長は首を縦に振らず、「1時間くらいで終わると思うから(終わるわけない)」と。なんだお前、Bに弱みでも握られてんのか?
結局は私が立ち会う事となった。しかし、初めて会ったその品管の方はとっても良い人で、会社での私の立ち位置を理解して同情までしてくれた。ちなみにベテランパートのHさんも事務をやっていたNさんもその時には既に退職しており、その当時の私は、景気が悪くなった故に名刺も作ってもらってないのに検査責任者のような立場になっており、なおかつ事務も任され、電話番はもちろん納品書の作成から銀行に出す給与の振り込み依頼書の作成、社長が不在の時のお客様の対応までありとあらゆる事をこなしており、計算機片手に事務仕事をしながらBの代わりに謝る私を見て「これは責められない」と思ったようである。
ちなみに、品管はBが実際に仕事をしているところを見てから帰社しており、後に彼から「Bさんは勤続何年目の何歳か。視力は?一日何時間働いているか」みたいな質問書が届いた。これはつまり、見逃しはB本人の責任であると言っているようなものだ。
ところがこの質問書をも、社長は「放っておけ」と丸無視していた。以後品管からの追及はなかったが、この件を機に社長への不信感がどんどん募っていくようになる。なぜなら、今回の件で一番悪いのはBを雇った社長、次に悪いのは実際にクレームを発生させたBである。私は検査責任者らしき事をしてはいるが正式に任命されてもいないうえに、クレームを発生させないための努力や注意喚起を最大限にしてきたのだ。その私の努力をガン無視した結果のクレーム発生なのにも関わらず、当人達が一切対応せずに私に責任を押し付けるとは何事か。呪うぞ。
こうして零細の社員(つまり、ワイ)はゾンビ化していくのであった・・・。

