零細企業と品質管理 その2

零細はつらいよ

零細企業と品質管理 その1(前回の記事)

 前回、業界の(日本全体だけど)厳しさが増していることをお伝えした。品質は確かに大事なのは間違いない。では、品質が良いものを作るには何が必要か。技術もそうだろう。しかし、一番大事なのは「その製品にかける時間」である。時間かけても出来ませんでしたというのは、原因が他にあるだろうからここでは触れない。しかし、一番大事なのに一番足りていないのがこの「時間」なのだ。

チョコベビーは1箱に何粒入っているか?

 では、具体的にどのように厳しくなっているかを、前回の例に沿ってお伝えしようと思う。

1.今まで良品として通っていたものが通らなくなった。
 いわゆる過剰品質というやつだ。例えば、製品の裏。基本的に我が社は何かに組み込む製品を作っており、製品の裏というものは、はめ込んだり組み立ててしまえば分からなくなる場所である。その裏に付いている傷や異物などは、製品の強度や動作に一切関わりのないものである。
 ところが、この人目に触れない箇所の傷や異物がNGになることが増えてきたのだ。最初からNGならばまだしも、ある日いきなり「これダメです」となる。いやいや、誰がこんな場所見るんだよ?しかし上のいう事には逆らえず、検査箇所が増える=事実上製品単価が下がる構図の出来上がりである・・・。

2.1個でも不良が見つかれば全数返品
 昔は、該当の不良の製品だけが返品され、代替品を納めるだけで済んでいた。それが、例えば1万個納品して不良が1個取引先の受け入れで発見されると、1万個全部が返品されるよ!ワ~イ(´・ω・`)
 一見すると仕方ないっちゃ仕方ないようにも思えるが、最近は納期の短縮が常態化しており、1つの製品にかけられる時間を短縮せざるを得ない=不良率が上がる構図の出来上がりである・・・。

3.入り数にめちゃんこ厳しくなった
 製品には、製品ごとに既定の入り数と言うものがある。例えばAという製品は〇号の袋に100個入りで、1コンテナ10袋入り(つまり1コンテナ1,000個入り)みたいな。これらはデジタル量りを使ってカウントしている。1袋100個入りというのはほとんどミスがない入り数である。問題なのは、1袋1,000個入りとかいうやつである。
 1袋に1,000個も入るという事はつまり、製品が小さかったり細かかったりする物である。小さいという事は軽いという事でもあり、重さ1gを切るような製品も存在する。今までは、このような製品は、足りなくならないように「おまけ」というものを入れていた。
 製品1個1個のグラムにはバラつきがあるため、どうしても「誤差」が生まれる。この「誤差」を回避するのは不可能に近いため、絶対に足りなくならないように5個プラスで袋に入れたりしていたのだ。量りには1,000と出ていても、本当に1,000個入っているのかどうかは数えてみないと分からないので、おまけという形式を取っていた。もちろん、メーカー側も最初はそれを容認していたのである。
 ところがここ5、6年で、いきなりそれが通用しなくなった。1,000個の入り数にはキッチリ1,000個入れてこんかい!という話である。しかし、1回の注文数が1,000個という事はめったになく、10,000や20,000という注文が一般的である。そんな大量の物を間違えずにピッタリ入れてこいというのは無理がある。
 そこで、更に精密な「音波量り」を導入し、100個×10回=1,000個で対応したりしても誤差があり、返品を食らう。「無理です」と泣きついたときにメーカーが提示してくる便利な道具がある。
「マス目シ~ト~!!」
 説明しよう。このマス目シートとは、A4などの大きさの紙に例えば10×10=100個の
マス目が印刷されており(将棋盤や、オセロ盤などを想像してもらえば良い)、それがラミネート加工されているとっても便利な道具なのであ~る。
 ・・・大体想像が付くとは思うが、このマス目1つ1つに製品を乗せ、数をカウントするものである。結局手で数えろってことかよ!!死ぬ!!
 何が何でもキッチリにしたいのには、メーカー様ならではの理由がある。メーカーの工場でいくつものパーツを組み立てる際、例えば5個おまけを入れて5個余った場合、「組み立て漏れが発生したからパーツが余る」とメーカー側は考える。これがキッチリと入り数通りに入っていたらパーツは余らない=組み立て漏れがないと判断するのだ。
 でもさ、よく考えてほしい。組み立て漏れは人間がやっている場合は絶対に発生するものと思われる。このメーカー側の考えに沿うと、例えば組み立て時に細かいパーツを床に1個落としてしまいそれに気が付かないまま作業を続けた場合、最終的にはパーツが1個足りない=入り数が1個足りないと言ってこちら側の責任にされてしまう可能性があるのだ。
 実際にメーカー側が我々と同じ作業をやったとしたら、間違いなく数量不足や数量過多は発生する。仮にマス目シートなる文明の利器wwを使ったとしても、シートから袋に移す工程で製品を落とす可能性もあり、完璧ではないのだ。
 メーカーは自分たちで出来ない事を下請けや孫請けに要求している。言い方を変えれば、自分たちで出来ない(正しくはこんな事やってられない)、出来たとしてもコストと時間がかかりすぎるので下請けに丸投げしているに過ぎないのだ。それを「仕事を与えてやっている」と思っていらっしゃるのでたちが悪いのである。そして、何よりも問題なのが納期短縮の常態化。納期なんぞあってないような物で、必ず納期短縮のお願いが来る。こちらは納期を目安に仕事のやり方を組み立てているが、その計画を変更せざるを得ない事がほとんどである。

 製品への要求が増えても単価が上がるわけではないため、作業量が増えても新しく人を雇う資金が捻出できない。しかも細かくて作業量が多い製品ほど、小さいからという理由で単価が安い傾向にある。
 きちんと指示通りにやるのと納期を短縮するのは、反比例の関係にある。納期が短くなればなるほど、製品の精度や作業の正確さは落ちていく。当たり前の話なのだ。そして、この反比例するものを無理やり比例する関係に持っていくために、長時間労働が常態化するという構図が出来上がってくるのである・・・。

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