目クソ鼻クソ対決 その12

仕事シーズン2・上

目クソ鼻クソ対決 その11(前回の記事)

 さて、上田の包帯グルグル事件は結局本人と社長の愚行により解決の糸口すら見つけられないままであった。包帯グルグルな以上工具を使う仕事はやらせない方が良いと判断したワイは、上田が帰った後に彼女が今やっている「ダラダラ切る」仕事を強制的に片づけ、その代わりに検査の仕事を置いたのである。

自分で言う事の愚かさよ

 翌日も上田は残念ながら包帯グルグル巻きで出勤してきた。自分の席に行くなり、昨日と違う製品が置かれている事に顔をしかめる上田はワイに「今日はこれですか?」と聞いてくる。ワイは説明をするために上田の席に行き「今日から検査やってもらうから」と言ったとたんめっちゃ顔を歪ませる。いや、そんなに嫌なら家で大人しくしてろよババア。昨日みたいにダラダラと製品を切れると思っていたのに残念だったな、いい加減にしろよ?
 製品の説明を始めるワイ。その横でそれを嫌そうな顔をしながら聞く上田。何この構図?今回の製品は注文頻度が高いため必ず覚えてもらわなければならない製品である。だがその分、検査の難易度としては初心者向けで簡単な製品でもある。おまけに作業標準書まである(つまりは簡易的なマニュアル)。ワイはこの記事にも書いたがマニュアル化しづらい「不良の種類、限度」をサンプルを持ち出して上田に説明。分からない場合は直ぐに聞くように彼女に告げた。
 ワイはワイの仕事があるので(すごく忙しいので本来ならば上田みたいな元からやる気のないババアに構っている暇などない)自分の席に戻って仕事を始める。ちょっとしてから上田が不良入れに大量の製品を入れて「あのぉ~、これってどうなんですかね?」と言ってワイの所へやって来た。いや「どうなんですかね?」って聞き方がどうなんですかね?(ややこしい)。アンタもう50歳半ばでしょうが、20代の新人みたいな聞き方してんじゃねぇぞ。まぁ、不良か良品か分からないって事だと思うので、ワイは「どれどれ」と言って(ワイ優しい)1個づつ説明していった。
 検査というものは前にも何回か書いたが中々習得が難しい部分があるため、未経験者(時には経験者も)には何度もトライアンドエラーを繰り返して覚えていってもらう必要がある。要は「記憶力と経験値、そして判断力」がモノを言うのである。ただでさえやる気のない上田が直ぐに習得できるとは考えにくいので、ワイは検査に関しては根気よく教えようとは思っていたのだが・・・。
 その後も上田は30分おきくらいにワイの元へ不良入れいっぱいになった製品を持って来た。しかし持ってくるものは「どこが不良か全く分からないもの」や「さっきOKを出したばかりのものと同等の製品(OKを出したものに関しては上田の机にOKサンプルとして置いてある)」「サンプルに同等の製品がある」などが大半を占めており、上田がワイが言った事を全然覚える事もなく「気になったもの全部を自分で判断する努力を全くすることなく、ワイにその場その場で聞きに来ている状態」になっていた。おい、ワイの仕事が進まねぇんだが?
 ワイは少しイライラし始めていた。確かに検査は初心者には難しい。だが上田のようにここまで「判断する努力をしない」人間は初めてである。そのため、本来ならばワイに判定してもらうたびに不良の数は減って行かなければならないはずが、むしろ逆に増えてきている状態。頻度も30分おきがなぜか15分おきになってきている。ワイが「これと同じやつ、サンプルにあったよね?」と聞いても「分からなくて・・・」としか言わねぇ。
 こんなことをずっと繰り返され、ワイはストレスマックスであった。本来ならば社長が注意するなり判断を下さなければならない事を、社長は義務を放棄するどころか逆に上田側に付いてしまっているため、注意するのも憚られる状態。前にも書いたがワイは最初から「上田を雇うのお断り派」だったのを勝手に雇ったのは社長である。こちらの意見を無視して雇ったんだから、上田の事に関しては彼女が何かやらかした場合社長が責任を取るのが筋のはずなのに、現実を見て見ぬふりをして「雇うの反対派」のワイに自分の判断ミスの尻ぬぐいをさせているわけで。社長がそんなアホなのをいい事に弊社にやる気のないまま出勤してくる上田も当然悪いが。
 さすがにもうこれ以上上田に甘えられても(舐められてると言った方が正しいかも)ワイの仕事が増えるだけで、おまけに周りのパートタイマー達もピリピリし始めている。再びワイに「これどうでしょう?」と聞きに来た上田に、ワイは怒りを抑えつつ無理やりの笑顔と優しい口調で「もうそろそろ覚えていってほしいんだけど。持ってくる製品の数が多すぎるから、サンプル見て少しは自分で判断して」と言うと、教えてもらえると思っていた上田は「・・・えっと、迷える子羊になっちゃって・・・」と言って自分の席へと引き返して行った。
 ・・・は?子羊?上田ってもしかして自分で自分の事「かわいい」と思ってる?でも現実は「子羊」じゃなくてババアの羊だし、なんなら羊じゃなくて足の裏なんだけど?自分の席に戻った上田は、サンプルを見ながら仕事を始めた。だがやはり判断が付かないらしく、結局ワイの元へと何回も足を運んでくるのであった。何日にも渡り上田にこの製品をやってもらったが、製品を検査する速さも判断力も当初と変わらぬまま、ワイはストレスを抱えながら上田の面倒をひたすら見る事になったのである。

 その後、初心者向けの他の製品の検査もやってもらったりしたが、上田は何をやっても「やる気ない、覚える気ない、出来ない」状態であり、ワイは段々とメンタルがおかしくなって行くのをこの時はまだ自覚出来ずにいたのである・・・次回へつづく。

 
 
 

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