地獄の2カ月 その3

仕事シーズン2・上

地獄の2カ月 その2(前回の記事)

 さて、不安だらけの新人町田の勤務が始まった。前回でも書いた通り女性でも高校生でも出来る仕事を担当することになっているのだが果たして・・・。

頭の悪いプランは遂行できない

 町田が手掛けた製品は、しばらくは2重検査がされることになっている。検査室の中で町田がやった製品を見てみると、ゲートカットが上手く行っていない製品とデカい異物の不良がかなりの数見つかった。まぁ、初日だし慣れていない事もあるだろうからそこを追求する事は無い。ただ、直してもらわなければならないので工場長のXから町田に伝えてもらい、奇麗に製品を切り離す方法を教える。
 町田は前に弊社にいたQと比べたらかなり大人しく、正直Xが教えている間も分かってるのか分かってないのか良く分からない反応(ややこしい)。でも珍しくXは根気よく教えている。ニッパーの刃の当て方や角度、力の入れ方まで事細かく教えているようだった(この作業はマニュアル化するのが難しく、コツを掴むしかない)。この作業は2週間もあれば慣れるのが標準である。というか、大事なので何回も書くがこのゲートカット作業すら出来ないのであれば弊社でやってもらえることはないくらいの初歩的な基本の作業なのだ。検査に関しては分からないものは外に並べてもらい分かる人間が判断するという方法が、本人が検査を習得するまで取られる。
 同じ製品をやってもらって1週間。普通は少しずつ良くなるものなのだが、一向に改善されないどころかむしろ悪化している。もちろん毎日Xが根気よく教えている上での話だ(普通に優しく教えている様子)。まぁ、まだ1週間だしな・・・そう思い2週間目に突入したが相変わらずで、そのまま2週目の終わりを迎えてしまった。
 こうなってくると、ただでさえこちらは手一杯なのに町田がやった製品も再検査しなければいけないわけで、元々大量の仕事抱えてるワイに更なる負荷がかかり始めた。しかもこの製品はギリギリのスケジュールでやっており、町田が帰る時間になると翌日の出荷に向けて直ぐに再検査に入らねばならず、時刻的にワイしか再検査が出来る人間がいない状態。そのため必然的に残業が増えていく事になる。
 結局町田の失敗は改善されないままこの製品の製造が終わってしまった。別の製品が後に控えているのだが、そのためには金型を交換しなければならない。社長の頭の中では1つの製品が終わる→即型替えをする(最短30分コース)→型替えしている少しの間だけ他の簡単な製品(ゲートカットやバリ取りなど)をやってもらう→金型交換したら次の製品即スタート!!俺の計画完ぺきウェ~イ!!と思っていたようなのだが、頭の中お花畑かよ。じゃあ、お前自身そんなにきっちりスケジュール通りに出来るのかって話なんだが。そもそもそんなにきっちりスケジュール管理やりたいのならそれなりの体制を構築してからの話になると思うのだが、そこは無視してあくまでも「従業員の努力のみ」でそれを遂行しろとな?キーエンスの社員じゃないんだから無理だろ。
 もちろんこんな社長の思惑通りに事が進むはずがない。ゲートカットすらできない町田がもちろん金型交換など出来るわけもなくXが1人でやらなければならないわけで、途中機械のトラブルもあるだろうし納期の関係で他に優先させなければならない製品もある。「町田が手持ち無沙汰にならない事」だけを優先してスケジュールを組むのは不可能なのだ。疑問なのはなぜ社長がこの「俺の考えた最高に頭の悪いプラン」をXに話した時に、Xがそれに反論しなかったのか・・・という事であった(今までのXの動向を見てれば大体察しは付くが)。
 型替えが終わるまでの間(社長の想定では最短30分程度だが、実際はスケジュールが立て込んでおり半日や丸1日型替え出来ない事もあり)、町田にやってもらえる事と言ったら他の製品のゲートカットしかない。だが、さっきまでやっていた製品よりも簡単なゲートカットですら町田は習得することが出来なかった。後で手直ししなければならないのであれば、最初からやってもらわない方がマシであった(実はゲートカットの手直しというのはものすごく時間がかかる作業である。そのため、奇麗に一発で切ることが必須なのだ)。

 さて、こんな事はまだこれから起こることの前触れに過ぎなかったのである。次回へつづく(ゲンナリ

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