地獄の2カ月 その10

仕事シーズン2・上

地獄の2カ月 その9(前回の記事)

 さて、町田の実情を知った社長はその場で結論を出さずに「ちょっと考えてみる」と言って弊社を去った。今までの経験則上「考えてみる」と言われた案件が本当に考えられていた事は1回もなく、このままどうなるのか不安しかないのだが・・・

・・・は?

 さて、その2日後くらいに社長から電話があった。町田の事で話があるから今から弊社に来るという。色んな問題から今まで散々逃げまわっている社長が自ら電話をかけてくるのは珍しいので、これは社長なりに何か結論を出したのかも知れない、とワイは思った。この場合、一般的な会社の社長が出すと思われる選択肢は3つくらいあると思われる。その3つとは次のようなものだ。

1.残念ながら辞めてもらう。
2.最初の募集要項通り、週3日くらいの勤務にしてもらう。

3.今のまま雇用継続。

 正直言えば、一番現実的なのは1番だと思う。そもそも町田を雇った当初の目的を思い出してほしいのだが「彼を雇って工場長Xとワイの負担を減らして残業代をも減らしたい」というのが社長の本音である。ワイらが正式な理由で残業をしている分ですら払いたくないレベルで会社の利益が無いのが実情なのだ。ところが楽になるどころか負担にしかなっておらず、町田は超初心者向けの簡単な作業ですら未だに出来ていない。前にも書いたが完全に本末転倒になっている。
 2番目は妥協案だ。しかし、週3日にしたところで「金具を機械に入れて、出来たらそれを取り出す」以外の作業はやってもらえない(出来ない)ので、本来ならばそれに付随して同時進行で進めなければならない作業は結局他の人間がやらなければならず、負担と残業だけが増え意味がないような気がする。
 3番目を選ぶには条件がある。それは既存の従業員の数を増やす事と、町田に診察を受けてもらう事だ。ただでさえ自分の仕事に手一杯なのに町田の簡単な作業の指導に何時間も何日も費やすリソースなどないのが今の弊社の現状なのだ。そして診断を受けてもらい専門家の指導を受けてそれに合わせてワイらが指導方法を考えなければならないという、非現実的な案だ。しかも町田の年齢(60代)を考えた場合、今まで療育を受けてこなかった人間がこの年になって果たして出来るものなのか、という疑問もある。「コストカット」と「従業員の負担の軽減」が町田を入社させた目的ならば、それとは真逆の方法となる。
 おそらく、普通の会社の社長であれば1番を選ぶと思われる。そもそもワザとではないとはいえ職歴偽装をしており、しかもごり押しでの入社。年齢も60代となるとそれだけで辞めてもらうには十分だとも思われる。ただし1つ問題なのは、あくまでもこれは一般的な会社の社長が下す判断であるため、どうも普通ではないような気がする弊社社長がこのような判断を下せるのか、という事である。
 そんな事を考えているうちに社長がやってきて、何やら工場長と2人で事務所に入って行った。・・・おかしい。上記の3つの案の内のどれかを選んだのなら、ワイもセットで呼ばれなければならないはずなのだが・・・。イヤな予感がした。しばらくしてワイが呼ばれた。3人が揃ったところで社長が言った。

シャチョ「さっき工場長と話してたんだけど、町田さんの機械の仕事が途切れないように今まで使ってなかった1号機も半自動成形で使う事にしたから、ウチの会社(Y社)から半自動成形の金型を持ってくることにした。町田さんが2号機をやってる間に工場長に1号機の型替えと成形の下準備してもらって、2号機が終わったら即1号機に入ってもらえるようにする。そんで1号機をやってもらっている間に2号機の型替えと下準備を工場長にやってもらって、1号機が終わったらまた直ぐに2号機に入ってもらえるようにする。それでいいよね、工場長?」
X「・・・ハイ」



 ナニコレ、ユメデモミテルノカナ?・・・・・・・・・・おっと、正気を失う所だった。ちょっと何言ってるか分からない。ワイが想定していた3つの案のどれにも当てはまらないような気がするんだが、気のせいか?それとも追加で良い案でもあるのか?あるのんか??あるよね???きっとあるよね????・・・次回へつづく。

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