かいしゃのへんなひと その4-2

仕事の脇道

 かいしゃのへんなひと その4-1(前回の記事)

 さて、こんなウルトラブラック零細企業になぜか常務としてやってきたZさん。ムードメーカー的な彼が入って来たおかげで会社の雰囲気は前よりも良くなっていた(そもそも元々が悪すぎるんだが)。しかし、それとは反比例するかのように仕事上で暗雲が立ち込めた。

人任せにするとこうなる

 Zさんが最初にいきなり手を付けたのはなんと、禁断の「製品の単価」だった。当時ウチの会社はK社としか取引がなかった。このK社、確かに製品単価が安い。製品の単価は完全に取引先の言い値で決まり、こちらの意見は汲まれない。割に合わないと思ったら値段交渉するのではなく仕事自体を断るのが慣例になっている(でもそれを繰り返すと仕事自体もらえなくなる)。
 このK社は手間のかかる割には製品単価の安い物が多かった。更にK社は製品を作る際の原材料を扱う会社も持っており、原材料も間接的にK社の言い値という状態であった(ちなみにK社の扱う原料を使わないと厳しく注意される)。なので、安い単価・高い原料というダブルパンチを食らっていた(ちなみに昔はそんな状態でもクソジジィが儲かるくらい色々緩かった。もちろんワイらには一切還元されてないがな!
 会社の立ち位置、レベルとしてはメーカーと直接交渉する立場という意味ではK社もZさんの元職場U社も同じだったが、協力会社へ払う単価が違い過ぎた。もちろん、メーカー自体が違うので一概には比べられないのだが、U社は業界でも最大手のメーカーの製品を扱っていたので違いは歴然だったようである。売り上げに対する原材料費率も、U社は10%~20%なのに対しK社は約50%を占め、その原材料費も経営を圧迫する原因の1つであった。元職場と比べてあまりにも安すぎるK社の単価に、Zさんは「これをどうにかしなければいけない」という使命感に駆られたらしい。
 そして、事もあろうにZさんは根回しも一切なしにいきなりK社に行き、持参した「単価を上げてほしい製品リスト」を片手にK社の担当者に価格交渉をしようとしたのだ。だが直ぐに追い返された。当たり前である。いくら単価が安いっつったって、事前の挨拶、根回し一切なしに単身乗り込んで果たし状のようにリスト持って来られたって対応できるわけがねぇんですわ。当時のK社の担当者は「なにこいつ」と思ったに違いない。いきなりなのはステーキだけにしてもらいたい。
 更に問題は続いた。ある日、製品のトラブルが発生した。成形した製品のサイズが規定内に収まっておらず、組付けが出来ないとK社から連絡が入ったのである。電話では状況が良く分からないので、K社の担当2人が来社することになった。このトラブルは検査部門は関係なく成形上の問題なので、K社の対応は工場長のXとZさんが担う事となったのだが・・・(嫌な予感)。
 K社がやって来た。組付け段階なのでメーカー側に製品は流れておらず、長い付き合いのK社側もこちらの状況は良く分かっているので、「オラオラどうしてくれる」みたいなやり取りは一切ない。起こってしまったものは仕方ないので、話の内容は「この組付けられない製品をどうするか」と「今後どうするか」の話し合いが中心となる。
 K社の提案として、今回の規定サイズを超えた製品はカッターで削ればなんとか組み立てられるらしくそれをやってほしいという事と、成形の際は治具を使ってこまめにサイズを測ってほしいという事だった。結果としてはウチの会社が悪い事には変わりないので提案の内容は「まぁ、そうでしょうね」というくらい妥当である。
 だが、この「カッターで削ってほしい」という部分にケチが付いた。え、誰がケチ付けたって?まぁ・・・Zさんしかいないですよねぇ・・・。以下、大まかなK社とのやり取りである。

K社「御社でカッターで削ってもらいたいのですが」
Zさん「いやぁ、ウチじゃそこまで面倒見れないよ」←なぜかため口
K社「でもこの製品作ったの御社ですし・・・」
Zさん「こんな安い単価でそこまでやってらんないよ」←やっぱりため口
K社「いや、そんなこと言ったって作ったのはそっちでしょ」←ちょっとカチン
Zさん「出来ないものは出来ない。お宅らがやってよ」←永遠のため口
K社「・・・そんなこと言うんであればこちらにも考えがあるけど?なんならお宅に依頼してる仕事全部引き上げても良いんですよ?」←完全に激おこ

工場チョ「・・・・」←完全に空気

 ここで一部始終を見ていたクソジジィが「ウチでやりますんで」と言って止めに入った。・・・というか、止めに入るのがそもそも遅すぎだろこのクソジジィ。仕事全部引き上げられたら業績改善どころの話じゃなくなるから止めに入ったんだろうがそもそも取引先にため口ダメでしょ。その時点で注意しろよ。結局K社の2人は激おこのまま帰社してしまった。これではプラスどころかマイナスである。製品に関してはカッターで削る役をZさんがやる事が決まった。ちなみにワイ氏、Zさんがぶつくさ文句言いながらカッターで削っている姿を目撃した模様・・・。
 一方激おこのK社。売り言葉に買い言葉で引き上げるとは言ったものの、その実現はかなり難しい。なぜなら、年々協力会社が跡取り不在や経営不振などで減ってきており、K社から大量の仕事を請け負っていたウチの会社から引き上げとなると、仕事の振替だけでかなりの労力になるためだ。
 そこでK社はウチの会社に次のような通達を出した。

「Z氏のK社への今後一切の出入り禁止」

 出禁ってホントにあるんだねー。まぁ、取引先にいきなり値上げリスト持参、ため口、喧嘩腰などをやらかしてるんだから、まぁ、そうですよねとしか言いようがないのだが、この事件の本質はそこではないとワイは思っている。
 そもそも彼をそこまで暴走させた原因はクソジジィにあると言っても過言ではない。会社の売り上げアップを狙って彼に好きなようにやってくれと言ったのはクソジジィである。好きにやれ=禁止事項がない、とZさんは捉えたまでの話だ。そもそもクソジジィとZさんの間でしっかりとした意思疎通が取れていたとも思えず、クソジジィ的には「高い給料払ってんだからなにがなんでも売り上げ上げようと努力するだろ」ぐらいにしか考えてなかった可能性が高い。
 というか、そもそも自分の会社の事をいきなり他人任せにするのが間違っている。そんな考えだから業績が落ちたのでは?という考えはクソジジィにはみじんもないようだ。そもそもジョブホッパーやってんだから、癖強いに決まってんじゃん。Zさんを見ている限り、決して悪い人ではない。ただ、型に嵌るのが嫌いなんだろうという印象を強く受けた。だから、やり方も型に嵌らなかったというだけである。
 K社からまさかの出禁をくらったZさんは落ち込んでいた。更に追い打ちをかけるようにクソジジィはZさんにクビを言い渡した。クビに関してはこのまま出禁だけで済むとは思えないとのクソジジィの判断だが、そもそも彼がクビだったらクソジジィは打首獄門レベルだと思うのだが?
 結局1年も経たないうちにZさんは会社を去ることになった。ZさんはZさんなりに会社の事を想って行動を起こした。ただ、やり方がまずかっただけだ。それを指導しなかったのは完全にクソジジィの落ち度なのだ。


 クビ宣告を受けたZさんは、自分があっせんしたU社の仕事を引き上げないでウチの会社に置いて行ってくれた。本当はクビになった腹いせに引き上げることも出来たはずなのだが、「社長がかわいそうだから・・・」と言って引き上げるのを止めた。変わり者ではあったがZさんには人の心、情というものがあった。そんな彼を1人だけ悪者に仕立て上げクビにする。果たして悪いのはどっちであろうか?
 ちなみにこのご時世故かは知らんが、Zさん今は1つの会社で長く大人しく勤めているようである。まぁ、クソみたいなウチの会社なんかにはいない方が良いよね(白目)。



 
 

 

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