前回はなぜ社長が鬱になったのか書いた。鬱は辛いとは思うが、その裏でストレスフルで必死にその穴を埋めようとしている人間がいるのを忘れられては困るんだよなぁ。
もう避難してください><
「会社をどうするのか」という大問題を解決するべく、社長は退院してきた合間を縫って知り合いや同業者に声をかけまくっていた。もちろん人を増やす余裕などないため、社長が退院しても上記の理由によりワイの忙しさは変わらなかった。
ある日、社長が珍しく調子のよい感じで話しかけてきた。「我が社の納品先の一つであるU社がウチの会社の面倒を見てくれるかもしれない」と言うのである。U社も我が社と同じく家族経営の会社ではあるがメーカーと直接取引をする立場でもあり、それなりの人数と技術を持っている。当然ながら、その分仕事に対する姿勢は厳しい。
なぜこのような話になったかというと、U社の社長にウチの社長が今後の会社の存続について相談したらしく、話の流れで「うちが会社の後を継いでも良い」という感じになったらしい。我が社もU社にはそれなりの数の製品を納めており、我が社が廃業となってしまうと「その製品を誰が作るのか」という問題が発生するためだ。その言葉を聞いて社長はウッキウキになり、上機嫌で「今度U社の社長と会長が視察に来るから」と我が社の従業員全員の前で伝えた。
この様子を見てワイは不安になった。なぜならU社の社長の「後を継いでも良い」という発言は、裏に隠された言葉があると思っていたからだ。その言葉とは「視察してみて条件が揃えば」である。ウチの社長はバカなので視察=問題解決と思っているようだが、視察はあくまでも合否を決めるために行われるものであり、当然ながら条件が揃わなければ話はストップする。
そしてU社の社格を考えた場合、どう考えても合格は出来ないだろうとワイは思っていた。ワイがそう思う理由は以下の通りである。
1.人手が足りないばかりに会社での各々の役割分担がはっきりしておらず、客観的に見てミスが起きやすい環境にある。
2.会社で一番若いのがワイで、後は仕事があまり出来ないオバちゃんばかりで未来がなさすぎ。
3.パソコンがない(正しくは使えない古いパソコン1台)。
4.倉庫などを買う余裕もないため、工場内にいろんなものが乱雑に置かれ、これもまたマイナス要因。
5.そもそもU社と我が社は同じ県内でも場所がかなり離れており、誰がウチの会社の管理をするのかなどの問題が発生。
6.上記の事から、社長が隠していても資金繰りが怪しいのが推測できる。
どう考えてもU社とは真逆の事をやっており、引き受けてくれるとは思えない。仮に引き受けてくれたとしても、少なくとも今のゆるゆるの環境は是正され、ミスばかりのパートタイマーは厳しく注意されるだろう。そんなワイの考えとは逆に、社長はもう引き受けてもらえた気分になってウッキウキのまま視察日を迎えた。
視察日、U社の4人が視察にやって来た。黙ってぐるぐる見て回り、社長と話をして帰って行った。社長は上機嫌でウキウキしながら「この会社美人ばっかりいるねって言って帰っていった」だとよ。この間まで鬱々としていたくせにバカかこいつ。美人っていうのは冗談だろうが、これだけははっきり言えるわ。性格ブスばっかやぞ?おん?(ワイは除く)。社長の中ではもはや視察は成功した事になっていたようである。
しばらくウキウキだった社長だったが、後日電話で「見送り」の結果を聞かされた。落ち込む社長。いや、当たり前でしょうが。今の我が社の状態は品質に厳しくなっている業界とは真逆の方向にあり、いわば完全に時代に取り残された状態。それを自覚せずに来たもんだから当然改善もなく、むしろどうして引き受けてもらえると思ったのか小一時間問い詰めたい。
こうして、社長の鬱はこれを機に更に悪化、精神病院への入退院を再び繰り返すようになる。売り上げは上がらないのにメーカー側の要求は厳しくなり仕事は忙しくなるばかり。
そして自分の事に精一杯でそれに伴うワイへのケア(金銭面、精神面)を社長がしてこなかった結果、ワイの体がとうとう悲鳴を上げ始めた。

