地獄の2カ月 その6

仕事シーズン2・上

地獄の2カ月 その5(前回の記事) 

 今日も町田のバリ取り作業がつづく。昨日の今日だから全く期待は出来ない。かと言って他にやってもらえる仕事も今のところないから仕方ない。時間はかかっても良いから、その代わり綺麗に仕上げてくれ・・・。

これはさすがにおかしい

 町田に作業してもらう時は当然ながらこちらが工具を支給しており、今回はカッターとニッパーが必要な作業となる。工場長のXが町田の仕事の指導も社長への報告も放棄したため、ワイは自分の仕事をしながら(正直言ってワイは仕事を抱えすぎていて本来ならば町田の進捗状況なんぞ見る余裕がない)、町田が「自称バリを取った」製品を再検査するというのを昨日と同じくやる羽目になった。
 さて、町田のバリ取り製品を自分の机に持って来て再検査を始めたワイだったが、ここでおかしな現象が見受けられた。昨日の町田が仕上げた製品は「ゲートが高くてバリも綺麗に取れていない製品」だったのが本日は「ゲートが高くてバリも取れていない上になおかつ製品に傷が入っている」というもの。・・・おい悪化しとるやんけ!!
 しかも傷の入り方がなんかおかしい。普通、支給してるニッパーかカッターで傷が入った場合、食い込んだような線傷、もしくはスパっと切ったような鋭角な物になるはずなのだが、この製品、傷っていうか・・・削れているような気がするんだが?どうしてカッターとニッパーでこんな仕上がりになるんだ????疑問に思ったワイは町田の元に行ってどうやっているかを確かめる事にした。
 するとそこには・・・・なぜか支給した覚えのない「ダイヤモンドヤスリ」を持って製品をゴリゴリと削る町田の姿があった。誰もそんな事やれなんか一言も言ってないしヤスリだって支給した覚えがないぞ?ワイは慌てて町田を止めた。

ワイ「町田さん!!そのヤスリ支給した覚えないんですか、どこから持ってきたんですか??」
町田「(ビクッ)・・・えっと・・家から・・・」
ワイ「使う工具の種類を指定してるのにはきちんと理由があるんです。このバリはカッターとニッパーじゃないと綺麗に取れないからその2種類を指定しています。ヤスリでこの柔らかいバリを取ろうとすると、バリは削れずに硬い製品の方が削れます。バリ残りは修正可能ですが、製品自体を削ってしまうとその製品は不良品扱いになります。ヤスリは絶対使わないで下さい。」
町田「・・・ハイ」←ほぼ聞き取れない

 ワイは無駄なのは分かっていたが一応Xに報告した。Xは「ダメだあいつ。あんだけ教えたのに」としか言わない。確かにダメっぽいのは分かったが、だったらその事は指導放棄する前に社長に報告上げにゃならんのでは?

ワイ「ねぇ、これさ、一応社長に報告上げた方が良いんじゃない?社長はあれから一度も会社に来てないし(逃げてる)こちらから報告しないと、上手く行ってるんだって勘違いするんじゃ?」
X「報告しない」←おや?デジャヴ?
私「でもこのままほとんど何も出来ていないのに放っておくわけにもいかんでしょ。事実は事実として報告しなきゃいけないんじゃない?」
X「俺はあいつのこと見捨ててるから」

ワイ「・・・(こいつキン〇マ蹴り飛ばしたろか)」

 だめだこいつ埒あかねぇ。見捨てる見捨てないじゃなくて、現状を見た場合に問題起こりまくってて仕事の滞りが発生して自分たちで対処出来ない以上、町田の採用を勝手に決定して更に今後町田をどうするかを決める唯一の権限がある社長に報告する(解決するかは別問題として)しか術がないのでは?
 一方、ヤスリの使用をやめた町田ではあったが、やはりワイが指導しても改善はされずむしろ悪化。しかもワイの再検査で不備が見つかり(てか、不備しかない)「ゲート高いの入ってました」と町田に告げる→町田「それ1個ダケデス・・・」→その後も大量に見つかるなど町田のつくウソにも振り回されるようにもなり、ワイの悩みは日に日にデカくなって行った。
 只でさえストレスの多い職場なのに逃げる社長、指導と報告の義務を放棄するX、どれだけ指導しても改善されない町田のせいでワイはどんどんストレスが溜まって行き、もはや持病とも言える胃痛になる頻度が増えて来た。痛みに耐えきれなくなり、またもや胃カメラを飲む羽目に(胃カメラ何回目だ)。いつもの事なのだが、カメラを飲んでも「粘膜的には何の異常もない」状態。そこで医者に聞かれた。「何かストレスでもあるのでは?」と。ワイは堰を切ったように仕事上の愚痴をこぼしていた。医者はワイの話を一通り聞き終えるとこう言った。

「自分は専門じゃないし本人を直接見たわけじゃないけど、その人多分発達障害なんじゃないかな?障害枠のある大企業ならともかく、体制の整っていない小さな職場でそういう人たちを雇おうとすると、現場が疲弊するよ」
 
 この一言を機に、ワイはネットで発達障害の事を調べまくった。そしてたどり着いた1つの答えがあった。「町田はASD(自閉スペクトラム症)なのではないか」と。ワイは医者ではないので断言するわけにもいかないが、今までの町田の言動、仕草、こだわり(制服が支給されているにも関わらず、自前の作業服をかたくなに着ていた)など、不可解だと思われるものもASDの特徴に当てはめるとピタッと来る。
 これでは普通に指導したって出来るわけがないし、そもそも彼がASDだとするとバリ取りやゲートカットも間違いなく難しい部類に入ってしまう。つまり社長が思い描いていた「俺の考えた最高に頭の悪い計画」はそもそも「町田は(定型の人間なら簡単だと思われる)仕事が出来ること」が前提なので、運用するのが最初から無理だったという事になる。

 もしそうだとするならば、それこそ社長に伝えるべき重大事項ではないか。町田が入社して楽になるはずが、それとは逆に現場(主にワイ)はすでに疲弊している。社長が「このくらいなら出来る」と町田に用意した仕事は一連の仕事の流れの1番簡単な1部分しか出来ていない、正直言って完全なミスマッチである。もうこれ以上町田の面倒は見る余裕もない。さて、どうする?!次回へつづく。

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