F社の視察 

仕事シーズン2・上

L氏登場(前回の記事)

 現場の意見を1つも聞くことなくL氏との間だけでF社の仕事の話を決めてしまった社長。そもそも何回も書いているように、新しい仕事に回せるリソースが全くない状態の弊社。どうすんのこれ?と思う間もなく、F社の視察団が来る日となってしまった。

お前は一体何しに来たのか

 F社の視察の時に新しい成形機は間に合わなかった。まぁ、契約して直ぐに持って来られる白物家電とはワケが違うから仕方ないね。先方には新しい機械を導入する事は伝えてある模様。F社の人間は5人でやって来るらしく、部長や課長といった方々が来るため、はっきり言って非常に嫌である。
 今回このF社に対応するのは工場長のX、社長、L氏、ワイの4人。安月給のワイが何で・・・と思いつつ、現実として製品検査の話を聞ける人間がワイしかいないから仕方ない。本来ならば、自分の手を止めてF社の相手をしている暇などないくらいワイは忙しいのだ。
 L氏は前日から準備していた。まぁ、彼はあくまでビジネスだからね。そして、何故か進行役もL氏が一手に引き受けることになっている・・・というか、正しくは社長に「任せる」と言われたらしい。・・・任せる?任せるって何?L氏に仕事がないか頼んだの自分でしょうが。確かにL氏ありきの仕事の話なのでL氏がその場にいるのは分かるが、自分の会社の事なのになんで人任せにしようとしてんの?
 F社の視察は午後の1時半からとなっている。お昼休み中休憩室のドアが開いた。そこには社長が居た。社長は「午後からF社の方来るから、会社の前の自販機でコーヒー適当に買って、来たら配ってくれない?」とな。その話を聞いた途端、社長の顔をじっと見ていたパートタイマーBが、「私には関係ない」といった様子で顔を背けたのをワイは見逃さなかった。いや、社長は別にワイの事を指名したわけではないから、極端な話をすればBがコーヒー配りをやっても何も問題ないわけだ。いつもは自分がお山の大将じゃないと気が済まなくて偉そうに人にマウント取ってんだから仕事の方でもその意気見せてほしいわ。
 あともう1つ気になったのが、なんでワイがコーヒー配んなきゃいけないのかって事だ。ぶっちゃけ、1秒惜しいレベルで仕事が詰まっている。一方、社長はほとんどの事をL氏任せにしており、会社にいてもそわそわしながらちょっと片付けてみたり、ちょろちょろしてみたり「やってる感」出してるだけでまるで役に立ってない。つまり現時点で暇なのはお前なんだから、お前がコーヒー配れば良いだけの話なのでは?ワイはフェミニストでも何でもないが、「その場で手が空いてる人間」がやるのが一番効率良いと思ってるので、女ってだけでコーヒー配りをやらされると思うと納得いかん。それとも何か?社長だからそういう事するとF社に舐めた目で見られるとか思ってんのか?
 もう少しでF社が来る時間となった。ワイはL氏に「腹痛のシメジさんが必要なお話になったらお呼びします」と言われた。が、コーヒーの件があるので、事前に購入していた缶コーヒーを男だけがぎっしり詰まった事務所に見計らって突入して配り終えてから仕事に就いた。
 しばらくしてワイはL氏に呼ばれた。F社は仕事を3つばかりお試しに持って来ていたため、その仕事内容の説明を聞くのが本日のワイの任務だった。机を挟んで向かいにF社の部長が座り、その部長の後ろにF社のその他の方々が立っていたわけだが、何か違和感を感じた。5人しか来ていないはずなのに1人多い気がする。・・・なんだこの感じは・・・。
 その違和感の正体は直ぐに判明した。F社の方々の更に後ろにひっそりと立っている奴が1人・・・社長だった。ワイはこういう事には非常に敏感なのだが、社長がその場で存在感を消して息を潜めている事を悟った。本来であればワイの後ろに立って一緒に話を聞かなければならない立場の人間のはずだ。・・・こいつ逃げてんな。そう思ったワイは、F社から仕事の説明を聞くたびに「だそうです、社長」とワザと社長の方を見て存在をF社にアピールしてやった。その後、いくつか疑問がある点をF社に尋ねてワイの本日の任務は終わった。

 視察自体は無事に終わったが、ワイは非常に不快だった。もちろん社長に対してだ。今まで接してきてこの社長という男が信頼に値するのかどうか、怪しい点がいくつもあった。社長が自分で勝手に持ってきた仕事なのだから、社長が積極的に表に出て従業員をサポートするのが筋であろう。それを逃げる姿勢を取るとは・・・。
 だが、こんな事は序の口に過ぎなかったのある。

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