F社の視察は無事(?)終わった。しかし社長はほとんどをL氏に任せ、まだF社が帰っていないにも関わらず「用事があるから・・・」と言ってY社に帰ってしまった。最初が肝心なはずなのになにこれ?てか、逃げんなよ。
これいる?本当に?
F社がお試しで持ってきた仕事は、月間の数があまり出ない物で単価だけ見たらK社よりはマシだが、その分結局手間がかかるもので利益率を考えたらK社と変わらない。だが、社長の中では売り上げが上がる=利益が上がるの方程式が出来ていた。確かに仕事を増やせば売り上げは上がる。それは間違いない。だが、それに伴い経費が増えることが頭の中からすっぽりと抜け落ちている。小学生でも分かることだ。この社長の中での絶対の方程式が今後会社を窮地に追い込む大きな原因になる事は、これから順を追って書いていきたい。
F社の新しい仕事のせいで、他の仕事が回らなくなってきた。パートタイマーに頼むこともあったが、BにF社の仕事を頼むたびに超絶嫌な顔をされるので、ワイはパートにF社の仕事を頼むのをやめてしまった。どうもパート達(特にB)は、F社の仕事は私たちに関係ない(誰もやらなくて良いとか一言も言ってない)と思っていたようである。なぜBがワイに対してそのような態度を取るのか、マジで謎(後々相談に乗ってもらった知り合いの助言(?)でBの行動原理の謎が判明するが、その話はまた後で)。というか、ずっとBにこのような態度を取られ続けちょっと感覚がマヒしてきており、Bが嫌がるし社長に言っても助けてもくれないから自分でやるしかない、という思考に陥っていた(事実、選択肢としてそれしかない)。ワイは自らの残業を増やすしかなかった。ちなみにこの時点ではまだ新しいパートタイマーを、募集すらかけていない状態だった。
そんな中、前から言っていた新しい成形機が弊社に搬入される日になった。最新式の成形機であり、オプションとして「トラバース」というものを付けているので成形機を売りつけたL氏はもちろんの事、社長や色んな業者が1日中出入りしていた。ちょっと説明するとこの「トラバース」という機械、成形されて金型から出て来た製品を真空状態の吸盤で捉えて、そっとベルトコンベアに置くというものである。要は製品を傷つけないようにするための物だ。つったって、コンベアの切れた先で結局製品落とすわけで、あんまり意味ねぇけどな!ただでさえ狭い工場内にでっかい成形機が来たわけだから、更に狭くなってしまった。この狭さも後に障害となってくる。
さて、設置が終わり業者は帰って行った。L氏と社長だけは残って工場長のXと何か喋っている。ちなみにいつもなら何に対しても「なになに、なにこれ?」と聞いてくるパートタイマーがこんなにもデカい成形機の存在を丸無視していたのは、「私たち関係ない、関わりたくない」という気持ちが強いからだろう。まぁ、このパートたちの態度が後々自分たちを苦しめることになるという事実に気が付くであろう日はまだ先なワケだが。
当然この高価な成形機を導入するにあたり、内部留保などもない弊社が出来る事は「借入」しかなかった。ただでさえ単価の低い業界でそれだけの借金を返すのは普通に考えて不可能に思えた。だが、社長には「おれのかんがえたさいきょうのAプラン(すなわち仕事を増やす=売り上げ増える)」という方程式が存在していた。だが、これを実行することによる弊害というものは一切考慮されていないし、もしAプランが失敗した場合のBプランというものは存在していなかった。やべぇぞ、これ。
社長の一存で導入されてしまった成形機。これを導入した事で社長の新しい仕事を取ってくる執念が加速し、弊社は地獄の道へと足を進めることになる。

