一番最初の採用は その6

仕事シーズン2・上

一番最初の採用は その5(前回の記事)

 機械を水没させたにも関わらず反省の色が全くないQと、報告を社長に全く上げないX。水に浸かって動かなくなった成形機は業者がほぼ1日かけて何とか修理が終わった。事が起こったのはその翌朝である。

労基法と現実と感情の狭間で

 Qは正社員のクセに毎日始業時間ギリギリになってから仕事を始めていた。労基法の観点から行けば始業時間ギリギリに来ても何も問題はない。しかしQの度重なるミス、そして30万円と言うワイの給料よりもはるかにデカい損害(ここ大事)、水没後しばらく動かなかった成形機(修理が終わるまでの間は動かせないので、それもある意味損害になる)。これらの事を総合して考えた場合はどうだろうか。
 実は成形機というのは電源を入れて直ぐに動かせるわけではない。立ち上がりまで30分くらいの時間を要する。Qの毎朝のルーティーンというのが、始業時間の20分前に会社到着→直ぐに成形機のスイッチを入れる→始業時間丁度まで休憩室でテレビ鑑賞、というものである。問題は機械が立ち上がるまでの間だ。実はその間にも出来る事がたくさんある。スケジュールの確認や原材料の用意、片付け等々。ただ、先ほども書いたように労基法の観点から言えば始業時間ギリギリまで休んでても何も問題はないのも事実だ。
 ワイがいる検査室と休憩室は隣接している。薄い壁1枚で隔てられているだけなので、検査室に居ながらにして誰が出勤してきて、今テレビをつけて・・・みたいのが大体分かってしまう。その日、いつものようにワイは本来の始業時間よりも早めに出勤、仕事をしていた(そうしないと色々間に合わない)。Qも始業時間の20分くらい前には会社に来ていたようだ(壁越しに分かる挙動)。
 これにはいろんな意見があるかも知れないが、ワイは思った。「あんだけデカいミスしときながら、いつもと全く同じ時間に来てんな」と。もしワイがQの立場だったら、会社への申し訳なさと自己嫌悪、そして汚名返上したいという思いから、多分いつもよりも早く来ると思う。まぁ、これは性格によるかもしれんが。
 そしてQは直った成形機の電源を入れ、せめて今日くらいは直ぐに動き始めるだろうと思ったら休憩室に引っ込んでテレビ見始めやがったではないか。しかもテレビ見て笑ってやがる。おい、お前が機械を水没させたせいで機械は動かせないわ納期は遅れるわ修理費用かかるわで皆にすんげー迷惑かかってんだが、分かってらっしゃらない?ワイはXの元に行きこう言った。

ワイ「Qが未だに休憩室でテレビ見てるんだけど、せめて今日ぐらいは早めに動くように言った方が良いんじゃない?皆に迷惑かかったんだし、納期遅れてるんだからそれくらいやってもらってもバチ当たらないと思うけど」
X「何言っても無駄だから放っておく」
ワイ「・・・(何言っても無駄って、お前そもそも何も言ってないよな・・・?)」

 Xが何も言わない以上、ワイが出る幕ではない。ワイはそう思い直して検査室へと戻った。ワイが仕事している間も、薄い壁の向こうからはテレビの音が漏れてくる。時計を見るともう始業時間の2分前。テレビの音はまだ聞こえている。始業開始1分前、テレビを見て笑うQの「わははは」という声が聞こえて来た。我慢我慢・・・労基法の観点からは何も問題な・・・・・・ブチッ!!!!!・・・ワイの中で何かが切れた。
 ワイはスタスタと休憩室へ向かい、部屋のドアを「バン!!!」と開けた。そしてテレビのリモコンをつかんで電源をブチっと切りこう言った。「テレビなんて見てる場合なんですかね?」。いきなりのワイの襲撃に、Qは鳩が豆鉄砲くらったかのようなおマヌケなツラをしている。

ワイ「機械壊しておいて、ギリギリまでテレビ見てるとかダメでしょう」
Q「だって、電源入れてから立ち上がるまで時間かかるじゃないですか」
ワイ「その間にどんだけでも出来る事あるでしょうが」
Q「機械立ち上がらないと何もできないから仕方ない」←ウソこけ
ワイ「機械故障して動かせなかった分納期遅れてるのに。只でさえ忙しいんだからもう少し自覚を持ってほしい。私ももうすぐ入院しなきゃならないのだし」
Q「社長からは忙しいなんて一言も聞いてない」
ワイ「暇なのに人雇うわけないでしょうが」
Q「・・・・」

 これが50代の妻子持ちの男性がする言い訳なのかとワイは呆れた。Qは小さい声で「分かりました」と言って動き始めた。だがこれが口先だけであるのはワイも分かっていたし、Qが自らそれを証明する行動に出るお話はまた次の記事で・・・。

 

 

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