すでに奴はそこにいた その3

仕事

すでに奴はそこにいた その2(前回の記事)

 前回お伝えした通り、Xは自分の気に食わないことが少しでもあると口頭で注意せずに無視や嫌がらせなどを繰り返していた。女性陣とXは、Xの性格と社長の認識の甘さのせいで連携が全く取れておらず、何か仕事で問題が発生した場合は社長を介しての伝言ゲームになっていた。

世界一腰低いワイ


 女性陣を仕切っていたHさんが退職後、流れから私が後任となった。肩書は無いものの一応責任者のような立場になったわけで、私は何から手を付けようか悩んでいた。その中で真っ先にやらなければならないと感じたのが「工場長Xと女性陣との連携」である。今のままでは時間の無駄な上に、正確な情報が伝わりにくい。そこで私がやったことは「一方的でも良いからこちらからコミュニケーションを取り続ける」という方法だった。
 例えば、朝の挨拶もサラッと明るく言ったり、どこかに旅行に行ったのならお土産を渡したり、仕事の事を聞くついでに雑談に持って行ったり。周りから見たらすんごい腰低かったと思うけど、ちゃんと敬語を使う事も忘れなかった。
 私はいつの間にか正社員になっておりそれも影響したかどうかは知らんが、そうした努力が実りXは徐々に心を開いていき、仕事上の協力が得られるようになった・・・ように見えた。

 ・・・それは突然やってきた。新しく我が社でやることになったある製品がきっかけだった。それは白色の製品だったのだが、組み立てても隠れないと思われる場所にマーブル状に模様が出てしまっており、これは良いのかどうか悩んだ末に社長に判断を委ねた。初めての製品という事もあり社長も判断が付かず、結局取引先の「品管」にお伺いを立てるという結論に達したため、結果が出るまではしばらくその製品の検査を保留することになった。
 さっそくXにもこの事を報告し、この判断が私ではなく社長の判断であるという事もきちんと伝えたのだが・・・Xの表情が険しくなり、イライラした様子に変わったかと思った瞬間「やってられるかよ」とセリフを吐いてその場を去ってしまった。そして、その日の夕方から異変が起きたのである。
 その当時の私は納期に追われており、独りで毎日のように残業していた。時期的に夕方になると外は段々暗くなり、私が帰るころには真っ暗になっていた。Xは私よりも早く残業を切り上げることもあり、その場合は足元が見えるように工場内の照明を1つだけ消さずに帰った。
 その日私はやっぱり残業をして、Xは私より早く帰ったのだが・・・。ふと自分のいる検査室から見える工場内の様子がいつもと違う事に気が付いた。「ま、ま、真っ暗よ~!!!!」そう、いつも付いているはずの照明が全部消された状態だったのだ。最初はXがうっかり消していったのだろうと思っていた
 ・・・ところが翌日も、その翌日も同じ現象が続いたのである。ワイは確信した。「これワザとだな」と。検査室から工場の照明のスイッチがある場所までは離れており、なおかつ検査室の明かりが届かない場所にあるため、工場のスイッチがある場所まで真っ暗な中たどり着くのは非常に難儀した。工場故にコンテナやカートなどの障害物がたくさんあり、私は壁に背中を押し付けながら小刻みにカニ歩きでスイッチを探り当てていたのである。気分は忍者である
 冗談はさておき、こういうことが2週間ほど続いたのだが、私が仕事の事でXに伝えなければならない案件があったため、(仕方なく)何事もなかったかのように今までの調子でXに接した。そして、その日の夜からなぜかピッタリと嫌がらせが止まって、工場に明かりが1つ灯っていたのである・・・めでたしめでたし・・・ってなるかバカヤロウ!
 何もなかったから何だかめでたい展開になってるけど、例えば真っ暗な中、うっかりカートに足乗っけちゃってカートが動いて転倒して骨折、打ちどころ悪かったら最悪死ぬ可能性だってあったわけだ。朝会社に来てみたら、ワイが血まみれになって「呪うぞ」って言ってたらイヤやろ?? 気に食わないことがあるならば、口で言えば良いのに。

 これは私の推測にしか過ぎないが、せっかく成型した製品を保留=それを成型した自分が否定されてるという思考に陥っているのだと思う。しかし今回は私の判断ではなく社長の判断である。嫌がらせをするならば社長にすべきなのだが、目上の人には逆らえないので私でうっぷん晴らしといったところか。
 とにかく、安易な嫌がらせは思わぬ事故に繋がることもあるので、良い子のみんなは絶対にやっちゃだめだぞ。

タイトルとURLをコピーしました