浸食 その3

仕事シーズン2・下

浸食 その2(前回の記事)

 ここは地獄である・・・しかも、これからも一切改善されることのない・・・・・・そういう考えに至ったワイは、ここから徐々におかしくなっていく。

異変

 最初の異変は朝の車での出勤時であった。ダルい。とにかくダルい。あの件以降、常にダルさはあったが、比にならないレベルでダルい。実は、夜もあまり眠れなくなっていたのでそれも要因の1つではあるだろうが。それでも仕事と納期は待ってはくれないので、朝の4時代に起床して5時代には車を出していたわけだが、とにかくダルい。それでも何とか会社に着いて業務をこなしていたのだが、ここから更なる異変が起こる。
 いつものように出勤するために車を走らせてはいるものの、無意識のうちに山手の道を選んで遠回りするようになっていたのである。一刻でも早く会社で仕事をするために早起きして出発してるのに、わざわざ遠回りをするという矛盾。更にその山手の道の待避所に車を止めて、電線に止まっている野鳥をボーっと眺めたりするようになった。更には、その野鳥を眺めながら無意識に涙が出てきて止まらなくなったり、しまいには何にもない状態でも涙がこぼれるようになってしまったのである。もちろん会社では何ともないふりをしてはいたが、パートが全員帰って検査室に1人になった瞬間に涙が出てきてしまうありさまであった。そんな状態がしばらく続いたのである。
 原因は「ストレス」なのは分かってはいた。「あの日」以来、ワイは前を向けなくなってしまっていたのである。しかし、一概に「ストレスのせい」だけにするわけにもいかない。「ダルい」という症状がある以上、何か身体に異常が起きている可能性も否定は出来ない。そこでワイは土曜日の午前中を利用して、かかりつけのクリニックで診てもらうことにしたのである。クリニックで出来ることを一通りやってもらい、血液以外は「異常なし」との診断。血液検査の結果は後日分かるとのことなので、翌週の土曜日に結果を聞きに再びクリニックを訪れたのである。
 相変わらずの体調のまま翌週の土曜日を迎え、再びクリニックを訪れたワイ。しばらく待ってからワイの名前が呼ばれる。

センセ「こないだの血液の結果なんだけど、全て異常なしでした」
ワイ「はあ・・・・・・(やっぱりな、というお気持ち)」
センセ「体の調子はどう?まだ変わらない?」
ワイ「相変わらずダルいです・・・・・・」
センセ「ダルいのと眠れない以外に他に症状はない?」


 ワイは迷った。ここは主に内科のクリニックなので、「涙が出る」や「ボーっとする」などのいわゆる「精神科の領域」であろう症状は伝えず、身体的な症状だけを申告していたからである。でも「他の症状は?」と聞かれた以上、言った方が良いのだろうか。そう判断したワイは情緒が不安定になっていることも伝えたのである。先生は「う~~ん・・・」と言いながら少し間をおいて言った。

センセ「ストレス、ない?」
ワイ「あります・・・・・・」
センセ「どんな?」
ワイ「仕事です・・・・・・」
センセ「仕事で例えば?」

 
 ワイは、堰を切ったように今までの事を若干の涙目になりながら話した。「社長が業績が悪いのを従業員のせいにする、そのことで責められる」「工場長が保身ばかりに走る」「パートとの折り合いが悪い」「人が足りない」「仕事が納期に間に合わずに早出・残業をするしか方法がない」などを話した。結構な時間を食ったとは思うが、先生は「それはおかしいね」とか同調しながら最後まで聞いてくれた(元々親しみやすいタイプのお医者さんだとは思う)。
 ワイの話が終わって、先生は言った。

センセ「話を聞く限り相当変な状況だし、それでストレス溜まらない方がおかしい。私は専門医ではないけど、恐らく「適応障害」になっているのではないかと思う・・・・・・今の状態は辛いだろうから『休職』することも考えた方が良いかもしれないよ」

 休職・・・・・・・・・・・・今まで「続けるか辞めるか」の2択しか持っていなかったワイ。それが叶うかどうかは別問題として、初めて出て来た選択肢にワイは戸惑っていた・・・・・・次回へつづく。

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