かいしゃのへんなひと その3ー1

仕事の脇道

かいしゃのへんなひと その2(前回の記事)

 会社の近くに家があるっていう人いますよね。あれは一見すると便利なようだが、実際は「窮屈」という側面も抱えているんじゃないかと思う。

遅刻する女 その1

 彼女がやってきたのは今から10年くらい前。私より5歳くらい年上で、社長の特技「ザル面接」で入ってきたパートタイマーだった。彼女の家から会社まで車で5分もかからなかった事が応募の理由だと思われる。
 どこでもそうだとは思うのだが、面接の際は会社の中を見学してもらっている。その流れで彼女が検査室に来たのだが(もちろん社長同伴)彼女の格好というか姿勢というか・・・パーカーのフードをかぶってポケットに手を突っ込んだまま入室し、軽くリズムを刻んで左右に揺れながらそのまま部屋の中を見て回るというスタイルだった。・・・え?ラッパーでいらっしゃる?・・・この姿に私は不安を覚えた。「こいつ大丈夫か?」と。私が仮に社長の立場ならば、こいつは絶対に採用しない。あまりにも色々外れすぎていてお話にならない。この姿は社長も目撃しているわけで、当然不採用にすると思っていたのだが・・・。
 数日後、社長は言った。「雇う事にしたから」・・・ねぇ、バカなの死ぬの?面接って何?何のために面接してるの?ねぇねぇ?と、ねぇねぇ人間になってしまったワイだったが、社長の決定ゆえ逆らうわけにもいかず、結局彼女を迎え入れるしか術がなかった。案外仕事出来るかも・・・と思いたかったが、一番気合を入れなければならない面接でアレでは期待は出来ないし、ワイの経験則からも「ダメだろう」感が強かった。
 そして出社初日、彼女は家から超近い所に住んでいるにも関わらず、自分の契約始業時間の4分前に会社にやってきた。他のパートタイマーが「本当に来るの?」と言うレベルでギリギリだった。さすがにこれはギリギリ過ぎである。早めに来すぎても余った時間は休憩してれば良いわけで、ギリギリに来るのは出社初日は避けるべきである。余りにも驚いてギリギリばかり書きすぎたわ・・・。
 まぁ、やっちまったもんはしょうがない。大事なのは仕事をしてもらう事なので、ここは気持ちを切り替えて彼女の仕事の指導に当たることにした。社長の話では「経験者」という事だったが、もはや耄碌ジジイの言うことなんぞ当てにならないのは分かっていた。「このような仕事はやったことがあるか」と聞いたら、「そこそこ」というお答え。私の経験上このような曖昧な答えを言うのは「出来ない」と判断している。
 そこで、彼女にはウルトラ簡単なお仕事をやってもらう事にした。それは製品を折って、デカすぎるランナーを切ってもらうという作業(ランナーとはプラモデルなどを例に取ると、パーツを取った後の使えない枠の部分だと思ってもらえれば良い。これがデカすぎると再利用のために粉砕するとき、粉砕機に入らないので小さくする)だった。
 この製品はデカいのでバキバキ適当に折るだけで良いし、ランナーを切るのも適当に2ヶ所切れば良いだけ。ぶっちゃけ中学生でも出来る、ウチの会社で一番簡単なお仕事だった。本当はこの後に更なる工程があるのだが、それの下準備のような作業である。彼女の今までの行動に一抹の不安を覚えていたため、この仕事で様子を見ようとワイは考えたのだ。
 作業を開始して直ぐ、ある問題に直面した。「ランナーが硬くて切れない」というのである。確かに他の製品よりもランナーは太いが、今まで色んな人間がこの作業をやって「硬くて切れない」と言って作業を中断した人間は一人もいなかった。困ったワイは、新しいニッパーに替える、負担のかかりにくい切り方を教える、手袋を重ねる、負担のかかる部分に事前に絆創膏を貼る等、出来る限りの対策をやったがそれでも出来ないという。
 この時点で、ワイは嫌な予感がした。これは「出来ない」というより「やりたくない」のではないかと。しかし、この時点ではあくまでも憶測に過ぎない。仕方ないので、製品をバキバキ折ってもらう(超ラク)だけに集中してもらい、ランナーは「申し訳ないけど」と、ほかのパートにやってもらう事にした。もちろん、本人には「これは本来は2つの工程で1つの仕事だからね」とは言っておいたが・・・

 本当は1回でまとめようと思っていたのだが、量が多すぎるので2回に分けることにする(別に記事数稼ぎの為ではないぞ)。

タイトルとURLをコピーしました